ホーナイの理論11

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ホーナイの著書『神経症と人間的成長』(Neurosis and Human Growth)の「第13章 仕事における神経症的障害」では、神経症が人間の「働くこと(仕事)」に対してどのような悪影響を及ぼすかが、精神分析的な視点から詳しく解説されています。

この章の主な内容を要約すると、以下の4つのポイントに集約されます。

1. 「本来の自己(リアル・セルフ)」と仕事の乖離

ホーナイは、健康な人間にとっての「仕事」とは、自らの能力を発揮し、創造性を表現し、自己実現(人間的成長)を果たすための自発的で建設的な活動であると考えます。 しかし神経症的な人間は、「本来の自己(リアル・セルフ)」から疎外されており、自らの本当の興味や関心、能力に基づいて働くことができません。彼らにとって仕事は、自分の「理想化された自己像(誇り)」を維持するため、あるいは「~すべき(should)」という内なる強迫観念を満たすための手段になってしまっています。

2. 仕事における障害の具体的な現れ方

神経症的な心理が仕事に影響を与えると、以下のような具体的な行動や症状(障害)となって現れます。

  • 能力の麻痺と非効率性: 内面で「完璧でなければならない」「失敗は許されない」という強迫的な「~すべき」の暴君(Tyranny of the should)が働くため、失敗への恐怖から仕事に着手できなくなったり(先延ばし癖)、過剰に細部にこだわってエネルギーを消耗し、効率が著しく低下したりします。
  • 自発的な関心の喪失: その仕事自体が「好きだから」「やりたいから」ではなく、「他者から称賛されたい」「偉くなりたい」という「栄光の追求(Search for Glory)」が動機になっているため、仕事のプロセスそのものを楽しむことができず、常に内面的な空虚感や退屈さを抱えることになります。
  • 過剰な競争心と脆弱なプライド: 職場の同僚や上司を「自分をおびやかす競争相手」と見なすため、協力関係を築くことが困難になります。自分の「神経症的な誇り(プライド)」が少しでも傷つくような批評や挫折を経験すると、激しい自己嫌悪やうつ状態に陥ります。

3. 神経症のタイプ別による仕事への影響

ホーナイは、神経症的傾向の解決策(防衛機制)のタイプによって、仕事への障害の現れ方が異なると指摘しています。

  • 拡張型(支配や勝利を求めるタイプ): 仕事において極めて野心的で、成功や権力を過剰に追い求めます。しかし、自分の限界を認められず、他者を蹴落とそうとするため、過労や職場の人間関係の破綻を招きやすい特徴があります。
  • 自己消去型(愛や従順を求めるタイプ): 自分の能力を過小評価し、他者に依存しようとします。責任ある仕事を任されることを恐れ、自己主張ができないため、能力があってもそれに見合った成果やポジションを得られず、不満を溜め込みがちになります。
  • 遊離・退行型(自由や孤立を求めるタイプ): 仕事からの競争や責任から完全に距離を置こうとします。組織に縛られることを極端に嫌うため、建設的な努力を継続することが難しく、結果として社会的な引きこもりや無気力につながることがあります。

4. 結論:建設的なエネルギーの浪費

この章の結論として、ホーナイは「神経症は、人間が本来持っている建設的なエネルギー(成長のためのエネルギー)を著しく浪費させてしまうプロセスである」と強調しています。 仕事における数々の障害は、単なる能力不足や怠け心ではなく、内面にある「理想の自分」と「現実の自分」の間の激しい葛藤によってエネルギーが奪われている証拠です。したがって、仕事のトラブルを解決するためには、目先のテクニックではなく、自分自身の神経症的なプライドや内なる強迫観念を自覚し、本来の自己を取り戻していく(人間的成長の)プロセスが必要であると説いています。

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